疾患の発症には「遺伝」と「環境」の二つの要因が関与
疾患の発症には、持って生まれた「遺伝要因」と生活習慣などの「環境要因」が関係しています。遺伝病の多くは単一の遺伝子変異を持つ人のほぼ100%に発症します。したがって、遺伝要因だけで発症する疾患であることから単一遺伝子疾患と呼ばれています。
生活習慣病をはじめとする多くの疾患は遺伝要因と環境要因の両方が寄与するものです。一卵性双生児の一方が発症した場合、もう一方の人が発症する確率を疫学的に調査し、二卵性双生児間の確率よりも有意に高ければ、こうした疾患に遺伝要因が寄与することは明確に示されます。
一卵性双生児ではゲノムが同一ですが、二卵性双生児間ではその共有率は約50%であるからです。双生児の片方が発症者のときにもう一方の人が発症する確率がわかると、その疾患発症に対する遺伝要因の寄与率を推定することができます。
例えば、2型糖尿病は遺伝的要因が大きいとされており、一卵性双生児が同時に発症する確立は80%程度であるのに対し、二卵性双生児では50%程度となっています。こうした疾患の遺伝要因には、複数の遺伝子が関与し、個々の遺伝子の関与の程度は比較的低いと考えられています。このような疾患を多因子疾患と呼びます。多因子疾患は、遺伝要因だけでなく環境要因もその発症に関与することから、生活習慣などの改善によって発症を予防することも可能です。
単一遺伝子疾患は、メンデルの法則に従う遺伝様式をとります。したがって、家計図の中でどのように発祥するかを調べることで、その疾患が単一遺伝子疾患かどうかが分かります。
もうひとつ考慮すべき要因として、疾患の原因となる遺伝子変異を持つ人のどのくらいの割合が発症するかという点です。この割合を浸透率といいます。ハンチントン病やデュシェンヌ型筋ジストロフィーなど、非常に強い遺伝子変異では、その変異を持つヒトは必ず発症し、浸透率は100%となります。
変異によっては、浸透率が100%より小さくなるものがあり、この値が小さいとメンデルの法則に従う遺伝として捉えるのが困難なことがあります。一般に単一遺伝子疾患は、浸透率の高いものを指し、その遺伝様式によって常染色体性優性遺伝、常染色体性劣性遺伝、伴性遺伝の3つのタイプに分類されます。