バイオインフォーマティクス
多くの生物におけるゲノム解読が達成されましたが、これは塩基配列が決定された段階に過ぎません。配列情報から遺伝子の機能を読み解き、さらに生命活動の仕組みを解明するという究極の目的に到達するためには、まだまだ長い道のりがあります。
ゲノム解読以降の研究を総称してポストゲノムと呼びます。ポストゲノム研究には、まず、大量の塩基配列情報をコンピューターで解析するバイオインフォーマティクスという研究分野が挙げられます。
これは生命科学と情報科学が融合した分野です。例えば、膨大な塩基情報のデータから、ある生物で機能がわかっている遺伝子配列と同じ配列が別の生物でも見つかれば、その生物も同じ機能を盛っていたり、系統関係が近いと推測することができます。
また、全ゲノム配列が手に入ったことから、ゲノムの個々の遺伝子の情報だけでなく、銭電子を研究対象として総合的に生命活動を理解するという手法もとられるゆようになりました。
オミクス解析
網羅的な解析の対象となるのは、遺伝子そのものだけではありません。研究対象はゲノムDNAから転写産物(トランスクリプト)の総和としてトランスクリプトーム、存在するタンパク質(プロテイン)の総体としてプロテオーム、代謝産物の総和としてメタボロームなども盛んに解析されています。
これらを解析する分野は語尾に-ics(オミクス)をつけて呼ばれることが多く、細菌は、このような手法を総称して、オミクスやオミクス解析と呼ばれることがあります。
特にプロテオームを扱う分野は、語尾に-icsをつけて、プロテオミクスと呼ばれ、ゲノム創薬など医薬開発などの産業に直結しているために、ポストゲノム研究として最も注目されています。
トランスクリプトーム解析
多細胞生物は、同じ遺伝子のセットを有しているにも関わらず、個々の細胞が独自の働きをしています。これは、細胞ごとに働いている遺伝子の種類が異なるためです。どの遺伝子が働いているかが、その細胞の性質や働きを決めています。
そのため、ある組織に存在するmRNAの種類や量を調べれば、その組織での遺伝子の働きを推測することができます。組織や細胞中に存在するmRNA(トランスクリプト)をまとめて解析するトランスクリプトームが活発に行われています。
これには何万という遺伝子の発現をまとめて解析できるマイクロアレイ法の開発が大いに寄与しています。マイクロアレイ解析で使用するスライドガラスは、わずか化数センチ四方に何万もの遺伝子の情報が載せられています。
トランスクリプトーム解析を行い、さまざまな組織や環境下での遺伝子発現を比較することにより、遺伝子発現の動きを知ることができるだけでなく、さまざまな現象間の関係を調べることもできます。
システムバイオロジー
さまざまな生物のゲノム配列が解読され、遺伝学だけでなく生命科学全体の研究手法も様変わりしようとしています。ポストゲノムの研究のなかでも、システムバイオロジーは斬新であり、生命科学の基礎・応用の両面で大きな発展が期待されています。
システムバイオロジーでは、コンピューターサイエンスと分子生物学を融合させ、生物をシステムとして理解しようとします。遺伝子やタンパク質などの個々の分子ではなく、これらの分子から発信される情報、それらが引き起こす情報伝達、代謝などをシステムとして捉え、システム間のつながりを解析して、複雑な生命現象をネットワークとして理解しようというものです。
このために、分子生物学的な解析から情報を得てシステムの構成要素を明らかにしていくこと、その規模のコンピューター処理による解析を両輪として進められます。それがコンピューター解析に依存していた従来のシミュレーション研究とシステムバイオロジーの違いです。